100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月17日、金曜日

 放課後、水飲み場で蛇口にホースをつなぐ。


「柊さん、お疲れ。部活?」


 そう声をかけてきたのは一ノ瀬の友達の双葉くんだ。


「うん。双葉くんも?」


「そう。サッカー部休憩中。一ノ瀬は……あ、来た来た」


 双葉くんの視線を追うと、一ノ瀬が走ってくる。

 私と双葉くんの間に入るけど、双葉くんの方が大きいから遮れてない。


「柊! おつかれ! こいつに変なことされてない?」


「しねえよ、馬鹿。先に戻るわ。あ、柊さん、明後日もよろしくね」


「明後日?」


「俺が誘おうと思ってたのにーっ!」


 双葉くんの背中に一ノ瀬が怒鳴る。


「柊、明後日さ、地区大会の二回戦なんだよ。だから、来てくれたら嬉しい」


「……何時から?」


「昼一! やった、頑張る」


「でも、この前みたいに、わざわざ会いに行くのはやだよ」


 そう言うと、一ノ瀬はちょっとしょんぼりした顔になる。


「あー……、うん。わかった。それは我慢する。かわりに、応援席のどの辺りに座ったかだけ教えて」


「わかった」


「じゃあ、戻るわ。あと53日だから。あ、帰り、駅まで送るから、待ってて」


「それは寒いし、嫌」


「暗くなってきたから送らせて。心配なんだよ。また後で!」


 一ノ瀬は私の返事を待たないで走って行ってしまった。

 スマホを取り出して、結の明日の予定を確認する。
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