100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月16日、木曜日

 朝、水やりを終えて校舎に向かう。

 十月も半分過ぎると、朝は結構冷える。

 校庭で走り回ってる運動部も、長袖の人が少しずつ増えてきたし、女マネはみんな萌え袖だ。

 ……そういう決まりでもあるんかな……。


「柊ー」


 バタバタ足音がして、振り返ると一ノ瀬が駆け寄ってくる。

 一ノ瀬は半袖のままだ。


「おはよ。あと54日! どう? 半分くらい俺のこと好きになった?」


「半分って何それ。まあ……嫌いじゃなくはない、かな」


「マジか! 今はそれで十分かな。あ、今日から体育、女子は陸上だって」


「そうなんだ? よかった。そっちの方がいい」


「男子は柔道だってさ。汗臭くてヤだな」


「サッカーも柔道も、汗臭さは変わんないと思うけど」


 そう言うと、一ノ瀬がギョッとした顔になった。


「えっ……、俺、汗臭いかな……?」


「夏とかは、まあ……。でも私お兄ちゃんいるし、そこまで気にしないけど」


「やだ。柊にはいつも爽やかでかっこよく見られたいんだ」


 何言ってんだ?

 爽やかでかっこいい男は文化祭の小物を勝手に持って帰ったりしない。

 でも、あれだな。さすがに50日近く一緒にいると、隣を歩いてることに違和感がなくなって、当たり前みたいに一緒に教室に向かっている。

 うーん、ほだされてる……。
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