100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月20日、月曜日

 放課後、誰もいない中庭で雑草を抜いていると、足音がした。

 振り返らなくても誰だかわかるから、しゃがんだまま作業を続ける。


「柊」

「んー」

「昨日、来てくれてありがとう。……始業式の日に『100日後経ったら、告白するからよろしく』って言ったじゃん」

「言ってたね」


 顔を上げられない。

 足元にはもう、雑草は残ってないのに。


「今日で半分だ」

「そうなんだ」

「……柊に俺のこと好きになってほしかったのに、俺のほうが沼っちゃっててさ。ずるいよな」

「私、なんにもしてないよ」


 ほんと、ぜんぜん。

 優しくもかわいくもないし。


「俺、柊が勧めてくれなかったら、小説なんて絶対に読まなかったし、文化祭で小道具作ったりもしなかった。自分で作ったごはんをおいしいって言ってもらえるのが、あんなに嬉しいって知らなかった」


 一ノ瀬は隣に座り込んでいる。

 俯いている私には、一ノ瀬の足元しか見えない。


「柊といると新しいこととか、知らないことをいっぱい知れて楽しいんだ。あと50日。よろしく」


 ……知らないよ、そんなの。

 私は自分が全然かわいくないこととか、イラつくこととか、そんなことばかり気付いちゃう。

 私は私が、ますますわからない。
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