100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月22日、水曜日

 授業中、ノートを取っていたら机の端に手が伸びてきて、畳んだ紙が置かれていた。


「……なにこれ?」


 隣を見ると一ノ瀬が楽しそうに笑っている。

 紙を開くと、『あと48日。動物園で見たい動物ある?』って書いてあった。

 ルーズリーフを出して、四つに切る。

 『カンガルー』と書いてウサギの形に折って一ノ瀬の机に置く。


「ちょ、かわいすぎて開けない……」


 一ノ瀬がそわそわしながら手紙を開いてる。たまにビリって音がして、不器用だもんな……って、ちょっとおかしい。

 また手紙が返ってきた。


『動物園デートのあと、一緒にご飯行こ』


『いいよ。動物園のレストランでシロクマかき氷食べたい』


 リボンの形に折る。

 一ノ瀬がまたそわそわしている。


『飯じゃねえよ』なんて手紙が返ってくる。


『じゃあ、ライオンカレー』


 ハート形に折る。

 一ノ瀬が息を呑んだ。

 それと同時にチャイムが鳴って、授業が終わる。


「どしたの?」


 手紙を持って、開きもしない一ノ瀬を覗き込む。


「ハート嬉しくてさ。てか、これ開いたら戻せないから開きたくない」

「いや、読んでよ」


 取り上げて開いたら一ノ瀬が「ひどい!」と叫んだ。

 散らばった手紙を折り直してあげたら、また大事そうに筆箱にしまうの、ちょっとかわいい。
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