100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月26日、日曜日

 昼過ぎ、図書館の前に行くと、一ノ瀬がもう待っていた。


「ごめん、待たせた」

「ううん。今来たとこ。嘘、楽しみすぎて、早く来すぎた。あと44日。柊、私服かわいいよな」

「そうかなあ」


 普通の、ぶかっとした薄手のニットにスキニー。

 もっと、かわいらしいスカートとかの方がよかったかなあ。

 ――いやいやいや、デートじゃないんだから。


「制服だとスカートだからさ、そうじゃないの珍しいし、スタイルよく見えてかっこいいしかわいい」

「……一ノ瀬も悪くないよ」


 なんとかそう言うと、一ノ瀬はニコニコする。


「そう? 柊と出かけるから、がんばって選んだ。じゃ、行こうか」


 図書館の自習室は誰もいないし、静かだ。

 一ノ瀬と並んで座り、まずは生物から。

 分からないところを教えつつ、自分の分も進めていく。

 英語と日本史、さらに数学や国語も同じようにやって、気づけばあっという間に宿題が終わっていた。


「終わった! なあ、図書室も行こうぜ。柊が薦めてくれる本、何でも面白いから楽しみなんだよ」

「そう?」


 二人で本を借りて、また自習室に戻る。

 薦めた本の感想を聞くのはけっこう楽しい。

 夕方、別れ際に、思わず手を伸ばしてしまう。

 触れる前に引っ込めようとしたけれど、見つかって掴まれてしまった。


「どした?」

「……ううん。なんでもない。一ノ瀬、また明日」

「また明日」


 離れた手が、ちょっとひんやりする。
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