100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月25日、土曜日

 朝起きたら、腕の中にふかふかしたものがあった。昨日、一ノ瀬が買ってくれたカンガルーのぬいぐるみだ。


「……ソウ……? いやいやいや……」


 ベッドから出て学校に向かう。


 水やりを終わらせて帰ろうとしたら、一ノ瀬に呼び止められた。


「柊! あと45日! ソウ、大事にしてくれてる?」

「……してない、わけでもない……」

「俺はリコ、大事にしてるよ」


 そう言って見せてきたスマホの待ち受けは、ワラビーのぬいぐるみが、この前映画館で私が選んだアクキーを持たされてる写真だった。


「リコ、めっちゃかわいい」

「……うざ」


 ワラビーのぬいぐるみはかわいいけど、私はちっともかわいくない。


「あ、そうだ。生物の宿題助けてほしいんだ。明日、一緒に図書館行こうよ。あそこの学習室空いてるし」

「いいけど、英語と日本史教えて」

「もちろん。楽しみにしてる。あとでニャインするから、時間とか待ち合わせ場所決めよう。じゃあ、また」

「うん」


 一ノ瀬は笑顔で戻ってった。

 家に帰るとカンガルーのぬいぐるみがベッドの上で待っている。


「……ソウ、ただいま」


 つい声をかけちゃって、当たり前だけど、返事はない。

 そっと、ふかふかの頭を撫でる。
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