100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月01日、土曜日

 水飲み場でホースをつないでたら、ばたばた一ノ瀬が走ってきた。


「おはよ、柊。あと38日。昨日、ゴム返すの忘れてたから、買ってきた」


 差し出されたのは駅前のファンシーショップの紙袋。

 私が一ノ瀬の髪を結んだのは百均のやつだったのに……。


「え、悪いよ」

「俺が持ってても困るし、使って」

「……ありがと」

「それでさ、明日って空いてる? 地区予選の準々決勝なんだよ」


 一ノ瀬が真顔で私を見てくる。


「あー……ごめん、明日は用事あるんだ」

「そっか、残念。えっと来週は?」

「……空いてる」

「わかった。じゃあ明日は絶対に勝つから、来週の準決勝、応援して」

「……う、うん」


 一ノ瀬はニコッと笑って、サッカー部の方へ戻っていった。

 私の手元には紙袋が残されている。

 開けたら、キラキラの飾りがついた、やたらかわいいゴムが入ってた。


「なにこれ、似合わないよ、こんなかわいいの」


 一ノ瀬は、どんな気持ちでこれを選んだんだろう。

 ……私に、これが似合うと思って選んでくれたのかな。


「うぬぼれるのは、よくない」


 呟いて、ゴムを紙袋に戻す。
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