100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月04日、火曜日

「音楽祭は、うちのクラスはミュージカルで『シンデレラ』をやることになった」


 ロングホームルームで担任の先生がそう言って、教室がざわめいた。


「音楽祭までひと月ないのにミュージカル???」

「シンデレラって……」

「えっ、準備間に合うの??」


 先生が手を叩いて静かにさせる。


「ミュージカルなのは先生がじゃんけんで負けたからです。すまんな! シンデレラは音楽委員の趣味だけど、ダイジェスト版だからなんとかなる。なんとかしろ。配役も音楽委員が決めたんだな?」

「はーい、私たちの趣味で決めました! 王子は一ノ瀬くん! シンデレラは柊さん! はたして、あとひと月で王子がシンデレラを落とせるのか、我々楽しみにしてます!」

「や、野次馬かよ!!」


 一ノ瀬が立ち上がるけど、先生に


「じゃあ、他に案を出せ。ひと月でみんなができるもの、音源と歌とダンスも用意しろ」


 って言われて撃沈した。


「ごめん、柊」

「……別に、一ノ瀬が謝ることじゃないでしょ。めっちゃ嫌だけど」

「う……、あの、あと35日、お願いします」

「……」


 返事が、できない。

 一ノ瀬の顔を見たくなくて、前を向いて先生の話を聞くふりをした。
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