100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月10日、月曜日

 朝の水やりを終えて教室に行くと、隣の席に、もう一ノ瀬は来ていた。

 ……結局、昨日のニャインの返事はできてない。

 お兄ちゃんとのツーリングにはスマホを持っていかなかったし、帰ってからも電源を切って枕の下に隠してた。

 今もカバンに入れたまま、電源は切ってある。


「莉子ち、おはよ。スマホ見た?」


 カバンを机に置いたところで結が登校してきた。


「ううん。昨日の朝から見てない」

「もー、宿題教えてってニャインしたのに」

「ごめん。どれ?」

「……莉子ち、目、腫れてない?」


 その瞬間、一ノ瀬が立ち上がって私の顔を見た。

 結が目を丸くした。


「柊、あのさ」

「結と宿題するから」

「……わかった」


 一ノ瀬は教室から出て行く。

 私が座ると、結が顔をしかめた。


「なんかあった?」

「なんも。昨日の朝、一ノ瀬からニャイン来てて……返事したくないからスマホの電源切って、それっきり」

「なんてきたのさ」

「……何が嫌だったのか、教えてって」

「それ、話した方がいいんじゃないの?」

「……一ノ瀬の口から、メイサちゃんの名前聞きたくない」

「だからって、ずっと話さないのは、一ノ瀬が可哀想じゃない?」


 正論だと思う。

 ……でも、もう少し気持ちの整理をさせてほしい。

 今日は、始業式以来はじめて、一ノ瀬のカウントダウンを聞かなかった。
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