100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月12日、水曜日

 放課後、校庭の隅で花壇に水やりをする。

 ホースを持って歩いてたら、サッカー部がストレッチしてた。

 ……一ノ瀬はメイサちゃんに背中を押してもらっている。


 ――「そりゃ、メイサはマネージャーなんだから、いるだろ……?」


 そうだね。マネージャーだもんね。

 ずっと一緒にいて、当たり前だよね。

 部活中に一緒にいるのも、風邪のときに家に来てもらうのも、メイサちゃんがあたしの方が仲良いいしってアピールするのも、一ノ瀬には全部当たり前なんだ。

 奥歯を噛んで、歩き出す。


 水飲み場でホースをつなぎ直していたら、いつの間にか隣に双葉くんが来ていた。


「一ノ瀬が落ち込んでてウザいんだけどさ」

「……私のせいで、準決勝負けたって思ってる?」

「いや、相手が強かった。……まさか、一ノ瀬がそれを柊さんに言ったのか?」

「ううん、イラついて八つ当たりした。ごめんなさい」

「いいよ。俺も無遠慮に突っ込んだから。……何があったか……聞いたほうがいい?」


 どう言えばいいか、言葉を選んだ。


「えっと……かっこ悪いけど、たぶんメイサちゃんに嫉妬して……ちょっとうんざりもしちゃって」

「あー……」

「え、それでわかるんだ……?」

「うん、なんとなく。俺もそれ、何回か一ノ瀬に言ったんだけどね。あ、一ノ瀬」


 駆け寄ってきた一ノ瀬が、顔をくしゃっとさせて、私と双葉くんを見比べた。


「……柊、双葉とは話すんだ」

「おい、一ノ瀬。それ完全にお前が言うなって感じだけど」

「双葉は黙ってろ。柊、あと27日だけど、俺は」

「颯ー、双葉ー、そろそろダッシュ始めるよー」


 遠くから、メイサちゃんの声がした。

 私はホースを抱えて、花壇に向かう。


「タイミング、最悪だな」


 双葉くんの呟きが聞こえた。
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