桜吹雪が舞う夜に
Sound Jam Sakura side.
寮の部屋に戻り、机の上にカバンを置いた瞬間、またさっきの余韻が込み上げた。
「日向さんが……バンド」
口に出しても、まだ信じられない。
ノートパソコンを開き、好奇心に負けて検索してみる。
ーーありふれた文字列の中に、ひとつだけ、古びたホームページが見つかった。
「Sound jam official site」
「Vo. Gt. Shiki / Key. Hinata / Ba. Satoru / Dr. Masaki」
そこには確かに、彼の名前があった。ギターでもなく、ベースでもなくーー“Keyboard”。
さらにスクロールすると、数多くの写真とともに各メンバーの紹介ページに辿り着く。
メンバー紹介
湊 四季 Shiki Minato(Vo.)
星成高校2年
透明感のある声が魅力の紅一点。高校生離れした存在感でステージに立つ姿は圧巻です。
添えられた写真には、ステージ上でマイクを握る若い女性。長い黒髪がライトを受けて輝き、笑顔は自信に満ちていた。
私は無意識に眉を寄せていた。
「……何これ、美人」
写真をじっと見つめていると、胸の奥がざわつく。
当時の彼が“声に惹かれてバンドを始めた”と言っていた、その本人なのだろう。
ーーもしかして、好きだったんじゃないか。
そんなことを想像してしまって、胸がざわついた。
日向さんの紹介は次にあった。
御崎 日向 Hinata Misaki (Key.)
東都心大医学部医学科 3年
キーボード兼作曲担当
メンバー唯一の大学生で、皆の頼れるお兄さん的存在。
いつも冷静で、将来は心臓のお医者さんとして多くの命を救うことが夢だそうです
「……ピアノ、なんだ」
胸が妙にざわめいた。
古いライブ写真を開くと、暗いステージの中で、彼は黒いキーボードの前に座っている。
指先が白と黒の鍵盤を叩く一瞬のブレた写真。
他のメンバーが激しく体を動かす中、彼だけは真剣な横顔で、音の世界に沈んでいた。
ーー今、自分が知っている穏やかな医師の顔じゃない。
舞台の光を浴びて、夢中で音を紡いでいた青年の顔。
「……見たかったな」
胸の奥が熱くなり、言葉が小さく零れた。
「日向さんが……バンド」
口に出しても、まだ信じられない。
ノートパソコンを開き、好奇心に負けて検索してみる。
ーーありふれた文字列の中に、ひとつだけ、古びたホームページが見つかった。
「Sound jam official site」
「Vo. Gt. Shiki / Key. Hinata / Ba. Satoru / Dr. Masaki」
そこには確かに、彼の名前があった。ギターでもなく、ベースでもなくーー“Keyboard”。
さらにスクロールすると、数多くの写真とともに各メンバーの紹介ページに辿り着く。
メンバー紹介
湊 四季 Shiki Minato(Vo.)
星成高校2年
透明感のある声が魅力の紅一点。高校生離れした存在感でステージに立つ姿は圧巻です。
添えられた写真には、ステージ上でマイクを握る若い女性。長い黒髪がライトを受けて輝き、笑顔は自信に満ちていた。
私は無意識に眉を寄せていた。
「……何これ、美人」
写真をじっと見つめていると、胸の奥がざわつく。
当時の彼が“声に惹かれてバンドを始めた”と言っていた、その本人なのだろう。
ーーもしかして、好きだったんじゃないか。
そんなことを想像してしまって、胸がざわついた。
日向さんの紹介は次にあった。
御崎 日向 Hinata Misaki (Key.)
東都心大医学部医学科 3年
キーボード兼作曲担当
メンバー唯一の大学生で、皆の頼れるお兄さん的存在。
いつも冷静で、将来は心臓のお医者さんとして多くの命を救うことが夢だそうです
「……ピアノ、なんだ」
胸が妙にざわめいた。
古いライブ写真を開くと、暗いステージの中で、彼は黒いキーボードの前に座っている。
指先が白と黒の鍵盤を叩く一瞬のブレた写真。
他のメンバーが激しく体を動かす中、彼だけは真剣な横顔で、音の世界に沈んでいた。
ーー今、自分が知っている穏やかな医師の顔じゃない。
舞台の光を浴びて、夢中で音を紡いでいた青年の顔。
「……見たかったな」
胸の奥が熱くなり、言葉が小さく零れた。