桜吹雪が舞う夜に
胸の奥にずっと溜めていた疑問が、堰を切ったようにあふれ出す。
「……だったら、どうして付き合ったんですか?」
気づけば、震える声で問い詰めていた。
日向さんがわずかに目を見開く。
けれど、すぐに沈黙に戻った。
「守りたいだけなら……最初からそう言ってくれればよかったのに」
自分でも止められない。涙でにじむ視界のまま、続ける。
「私は……一緒に生きたいから、ここにいるんです。守られるだけなんて、嫌なんです」
日向さんは俯いたまま、拳をぎゅっと握りしめていた。
答えてくれない。
(どうして……どうして黙るの……)
「……答えてくださいよ」
喉の奥がひりつく。
「私、何なんですか? ただの……弱い子供なんですか?」
日向さんの唇がわずかに動く。
けれど絞り出された声は、私の望む答えじゃなかった。
「……桜を失いたくない。その一心なんだ」
優しすぎるその言葉が、逆に残酷に響いた。
(違う……。私が欲しかったのは、対等に“隣に立つ”ことだったのに……)
胸の奥で、小さな音を立てて何かが崩れていくのを感じた。