桜吹雪が舞う夜に


互いの呼吸が重なり、肌が触れ合うたびに熱が深くなっていく。
日向さんは一度動きを止め、見つめるように私の頬を撫でた。

「……桜の身体、どんどん良くなってる」

低く呟く声には、欲望だけじゃなく、驚きと感謝が滲んでいた。
「最初は痛みに耐えてただろ。
でも今は……ちゃんと気持ちよさそうにしてくれる」

頬が赤くなる。言葉にされると、余計に恥ずかしい。

「……日向さんのおかげです」

小さな声で返すと、彼はわずかに目を細め、苦しそうに、けれど嬉しそうに笑った。

「……俺も、嬉しいんだよ。
君が慣れてきて……俺を受け入れてくれるのが」

その言葉とともに、再び深く抱きしめられ、夜は波音のように静かに、でも確実に熱を増していった。


< 198 / 306 >

この作品をシェア

pagetop