牧師の息子のエリート医師は、歳下医学生に理性が効かないほど夢中です。(旧題:桜吹雪が舞う夜に)
「ーー何が怖いと思ってる? 教えてくれないか」
日向さんの声は低く穏やかで、追い詰めるのではなく、逃げ道を残してくれるような響きだった。
「……痛いんじゃないかと思っていること」 喉がつまって、やっと絞り出した言葉。
「……それは、俺も怖いよ」
日向さんが苦笑する。
「なるべく痛くないよう、努力したいと思ってる。焦って無理やりなんて、絶対にしない」
「……貴方の過去の経験と比べられること」 思わず下を向く。自分でも、子供っぽい嫉妬だと分かっていた。
「正直、期待させて悪いけど、そもそもそんな経験数が多い方じゃない」
日向さんは少し間を置いて、真面目に続けた。
「俺は……慣れている大人の男、なんて幻想で見られてるのかもしれないけど、それは違う。だから比べようがないんだ」
少しだけ胸が軽くなる。でもすぐに、もう一つの恐怖がのしかかる。
「……妊娠してしまうこと」
声がか細くなる。
日向さんはすぐに首を横に振った。
「妊娠の可能性に関しては……勿論ちゃんと、ゴムは着けるよ。絶対に、約束する」
真剣な目がこちらをまっすぐに捉えている。
「危険な日なら避けたりもできる。それでも不安なら、ピルを飲むって方法もある。ただ……副作用もあるから、俺から積極的に勧める気はないけど」
そこで一度言葉を切り、低い声で続けた。
「ただな……正直に言えば、これに関しては絶対に避ける方法なんて存在しないと思ってる。だからもし、そうなったとしても――俺は逃げない。男としての責任は必ず取る。それも、約束する」