社長、社内恋愛は禁止のはずですが
私は思わずちらりと社長を見た。

どう考えても、誰もが振り返るようなイケメン。

表立って恋人がいないなんて、嘘のように思える。

そのとき、一瞬だけ目が合った気がした。心臓が跳ねる。

しかも社長は談笑していた相手に軽く挨拶をして、真っ直ぐこちらへ向かってくるではないか。

――え、ええっ!?

「どうした、水城。」

突然名前を呼ばれて、優しい声音に全身が熱くなる。

これで恋するなという方が無理だ。

「あ、あの……」

声を出すだけで精一杯。周囲の視線が気になって仕方ない。

私が社長を見ていたことがバレるのでは、と不安になる。

「会議の内容についてか?」

「え、はい……」

慌てて会議資料をめくると、社長が自然に身を寄せてきた。

顔が近い。資料を指し示す手がすぐ横にある。

そして――ふわりと香る洗練された匂い。

やばい。息が詰まりそう。冷徹な御曹司社長に近づかれて、胸の鼓動はどうしようもなく速まっていった。
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