大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。

第142話 告白の翌日は、世界がいちいち眩しい(地獄の月曜日編)続

会社を出ると、夕方の風が肌に触れた。

金曜日より少し冷たいのに、心臓はあの時より熱い。

どちらからともなく並んで歩き出す。

ビルの窓に映る二人の姿が、なんだか“当事者感”を増幅させる。

「……あの」

朱里が切り出すより先に、嵩が口を開いた。

「金曜日、“好き”って言ったこと。
 あれは、勢いじゃなかったから。ちゃんと伝えるつもりで言った」

その言い方が、ずるいと思う。

曖昧じゃなくて、でも決定的にも聞こえて。

胸の奥が、期待で痛くなる。

「……嬉しかったです。すごく。
 でもまだ、怖いのも本当で」

正直な言葉だった。強さじゃなくて弱さの方が

素直に出た。

嵩は立ち止まり、朱里の方を向いた。

街灯に照らされて、表情が少しだけ影になる。

「怖いならいいよ。無理に追いつかなくていい。
 ……俺のこと、嫌いになって逃げようとしてるわけじゃないなら」

心臓が跳ねた。

その言葉が核心だった。

朱里は小さく首を振る。

「嫌いだったら、とっくに逃げてます。
 “嫌いになれたら楽なのに”って思うくらい……好きだから困ってるだけで」

自分で口にして、顔が熱くなる。

まるで言葉が先に走って、気持ちが追いつけていない。

嵩の目が、やわらかく揺れた。

「じゃあ……困らせていい?」

「えっ、ちょ、困らせる前提なんですか!?」

「うん。だって俺、中谷さんのこと意識してるのに、
 普通の距離ではいられそうにない」

言葉が近い。距離も少しだけ近い。

ほんの数センチ。でも、世界が変わりそうな差。

その時──

ピロリン♪

朱里のスマホが鳴った。

ディスプレイには瑠奈からのメッセージ。

《先輩。今日、帰ってるの見ました。
 負ける気はないので、言っときます。
 ちゃんと進んでください。じゃないと、追い抜きます。》

心臓がまた跳ねた。

追い抜かれる、という言葉が刺さる。

嵩が朱里の表情を見て、静かに問う。

「……瑠奈さん?」

「はい。でも……大丈夫です。
 もう“逃げる理由”にはしません」

答えながら、自分の覚悟を再確認する。

怖いけど、それでも進みたいと思った。

嵩が息を吸う。

告白の続きを言うように、口を開いた。

「じゃあ……ちゃんと付き合おう、とは今は言わない。
 急がない。でも、曖昧にもしない。
 中谷さんの隣にいたいってことは、形にしていく」

朱里は目を伏せて、そして顔を上げた。

「……私も、隣にいたいです。
 怖くても、ちゃんと前を見ていたいから」

それが、今の二人の答えだった。

嵩が微笑む。

「じゃあ今日はここまで。次の一歩は、またちゃんと話そう」

「……はい。逃げずに」

二人は少し距離を保ったまま、でも前より近い歩幅で歩き出した。
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