円周角の恋模様 ~ この恋は証明できる? ~

第1話 わかんないよ


 「珠奈(しゅな)計典(かずのり)くんとはうまく進んだ?」

 「それがね、全く興味なしって感じでさぁ」

 「え、結構お似合いだと思うんだけどなぁ」

 「そう? いまいちわかんないのよね。」

 こう聞いてきたのは、幼なじみの採子(さいこ)
 なにかとおせっかいなんだけど、小さいころからそうだった。

 私たちは同じ中学の3年生、同じクラスだ。
 もう部活動も終わって、ちょっと時間が空いたけど、
 勉強もしないといけない時期なのだ。


 「お話しするきっかけでもあればね。」

 「ないわよ、そんなの。」

 「だって計典くん、勉強で忙しいでしょう?」

 「え? そうなの、この前も公則(きみのり)たちと一緒に遊んだよ。」

 「採子も?」

 「ムフフ……。」

 「で? そっちはどうなの。」

 「それがさ、公則ってば、私に男の子を紹介するってさ。」

 「え~、採子はノーマークってこと?」

 「……そうかも。」


 意外にも、採子って乙女なんだな。

 「まぁ、元気出しなよ。かわいいわよ、十分ね。」

 まったく、乙女になったこの姿を、公則くんに見せてあげたいわよ。


 計典くんの席に、公則くんがいた。

 「なぁ計典、この問題なんだけどさ、お前わかる?」

 どうやら数学の宿題の解き方を、公則くんが計典くんに聞いているようだ。

 その様子を見た採子が、

 「ほら、行くよ。」

 そう言って私の手を引っ張った。

 「ねえ公則、その問題、私たちにも教えてよ。」

 「え? ちょっ、ちょっと、急に何言いだすのよ。」

 「いいじゃない、計典くん、数学得意でしょ?」

 「なんだよ、俺に用じゃなかったのか?」

 「あんただって、聞いてたでしょ?」

 「まぁ……そうだけど。」

 「ほら、ここは計典くんの出番で。ちょうどこの子も悩んでいたからね。」

 「いいでしょ、計典くん。」


 こういう時の採子は、突っ走るんだ。

 「うん、いいよ。えっと……?」

 「私が採子で、こっちが珠奈。ほら、ご挨拶。」

 「うん……計典くん、よろしくね。」

 「なんだよ、手ぐらい握ってやれよ。」

 そうやって公則くんがからかうから、採子は軽く肘鉄で突っ込んだ。

 「何を……。」
 「ええ、まぁお願いするわね、計典くん。ほら、珠奈も。」

 「よろしくお願いしまっしゅ……。」
 (……かんじゃった。恥ずかしすぎて消えたい。)
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