本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 誰に聞くわけでもない問いが、胸の奥でずっと渦巻く。
 兄夫婦の事故の知らせを受けたあの日から、青葉の世界は一変した。

 突然すぎる別れ。残された幼い命。親代わりになれるほどの覚悟が、自分にあるのだろうか。仕事は安定しつつあるとはいえ、育てる責任が果たせるのか何度も考えた。

 しかし――。


 「そんなことを悩んでる場合じゃないよな」


 兄夫婦の自宅の端には、甥の小さな手で握りしめていたおもちゃが置かれていた。
 プラスチックの赤い車だ。兄が買ったものだろうか。

 青葉はそっと手を伸ばし、望の頬を指でなぞる。青葉の腕にしがみつき、言葉にならない声で泣き続ける望には頼れるはずの父も母もいない。その手が掴めるのは、青葉ただひとりなのだ。

 様々な葛藤の末、望との生活がスタートした。

 そうして二年の月日が流れた矢先の出来事だった――。
 青葉が保育園の門をくぐると、子どもたちの元気な声が迎えてくれた。

 視線を巡らせると、望は園庭にある砂場の小さなグループの中にいた。スコップを握りしめ、夢中になって穴を掘っている。
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