本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 足を踏ん張り、引き留めた。混乱したため思わず従ったが、このまま部屋に連れ込まれるわけにはいかない。


 「どうして? プロポーズしてきたのはキミだよ?」


 どうして拒むのかまるで理解できないといった様子だ。


 「それはそうだけど、突然こんな」
 「体の相性を試してみないと、俺は答えを出せない。なにしろ人生を捧げる相手を決めるんだから」
 「であれば結構です」


 手を解き、胸の前で両手をパーにして彼に向ける。
 体からはじまる関係を否定するつもりはないが、彼とは価値観が違う。結婚を急いでいるとはいえ、莉乃にとって彼はパートナーとして不適格だ。翌朝目覚めたら彼の姿がどこにもないオチまで、簡単に想像できてしまった。
 彼の言葉を借りれば〝人生を捧げる相手〟として考えられない。


 「なんで。抜群の相性かもしれないのに」
 「いえ、たぶん違うわ」


 直感した。莉乃の相手はこの男ではない。


 「では失礼します。これ、さっきのお金です」
 「待てって」


 財布から千円札を二枚取り出し、彼のポケットに押し込む。踵を返し、逃げるようにエレベーターに飛び乗った。
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