本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 青葉は唇をそっと離し、莉乃の濡れた髪を指で軽くかき上げて瞳をじっと見つめた。その手がゆっくりとブラウスのボタンに伸びる。

 莉乃は一瞬身を縮こませたが、青葉の熱を帯びた視線を見て躊躇いは消え失せる。ブラウスは床に落ち、素肌が晒された。冷えた肌をあたためるように撫でる指先が熱い。


 「行くぞ」


 青葉は莉乃に腕を回し、軽々と抱き上げた。


 「青葉さん……!」


 小さく声を上げ、慌てて彼の首にしがみつく。濡れた髪が青葉の頬に触れ、滴る水が青葉のシャツに染みたが、彼は気にせず強く抱きしめた。

 バスルームから寝室へ向かう足取りはたしかで、莉乃の体重をものともしない。寝室のドアを押し開け、青葉はベッドまで進むと、莉乃をそっとシーツの上に下ろした。

 頬が熱を帯びて熱い。戸惑いと期待で揺れる目で彼を見上げる。早鐘のように鳴り響く鼓動が、彼にも聞こえているのではないかと気が気でない。
 青葉はピンと張ったシーツに、莉乃の両手を縫い留めるようにした。
 おそらく青葉は、ただ単に欲情を抱いただけ。そこに感情はなく、本能の赴くままに莉乃を抱こうとしているだけに過ぎない。
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