本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 その横で航希は腕を組み、店内をじっくり観察しながら口を開く。


 「悪くないな。胡散臭い山城の物件より、断然こっちのほうがルナリアっぽいよ。客層も合いそうだしアクセスも悪くない。青葉さん、いい目利きしてるじゃん」


 航希が感心したように言う。以前は青葉をライバル視していた彼だが、最近は青葉の実力を認めている節がそこかしこに見える。
 莉乃が山城とトラブルになったあの夜、青葉を頼ったのはなによりの証だろう。


 「航希くんの言うとおり、このエリアはルナリアのターゲット層にマッチする。環境意識の高い若い女性や健康志向のファミリー層が多い。マーケティングデータでも、このエリアでの自然派コスメの需要は右肩上がりだ」


 彼はタブレットを取り出し、グラフや分析資料を莉乃と航希に見せながら説明を加えた。
 莉乃は資料に目を通しながら、青葉への信頼がさらに深まるのを感じていた。あの夜、青葉が山城から自分を救ってくれた瞬間から、そして一夜を共にしたときから彼に対する想いは大きく変わっている。

 しかしだからと言って気持ちを押しつける気も、伝える気も今はない。あの夜は、偶発的に起きた事故みたいなものだからだ。
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