ナイショの妖精さん1
「わっ! 」って右手首を見たら、あたしの手までつかまれてる。

「ちょ、ちょっと、待ってよっ! あの子、中条に『助けて』って言ってるんだよっ!? 」

 引っぱられて、あたしまで走らされる。

「知るか、あんな人間外っ!」

 砲弾倉庫のわきを通って。登山道へ足を踏み入れたときには、妖精の姿は消えていた。

 それでも中条、走るのをやめない。

「ねぇ、とまってよ! 手ぇ痛い 」

「立ちどまって、あのバケモンに追いつかれでもしたらどうすんだよ! クソ! まだ、サブイボ立ってる。こんな恐ろしい思いすんの、『よい子のホラー館』以来だっ!」

「え? えっと……それって、ベイランドの中にあるオバケ屋敷のこと?」

「ほかにあるかっ!? 」

 だって……。

 ベイランドってのは、地元のちっさい遊園地。オバケ屋敷は怖くなさすぎて、幼稚園児でも笑って出てくるって有名なんだけど。

 中条って、もしかして……。

 ううん。もしかしなくても。

 すんごいヘタレ……?


 土の細い登山道が、アスファルトの道路にぶつかった。

 道路を数メートルくだったところにある駐車場から、小学生たちの声がきこえてくる。

「あ! 中条く~ん!」

 リンちゃんが駐車場の入り口で、両手を大きくふっている。

 とたんに、汗ばんだ手のひらが、パッと、あたしの手首からはなれた。

 手錠をはずされた気分。ホッとして、相手を見あげたら、ジーンズの後ろポケットに両手をつっこんで、目を細めてた。

 ……あれ?

「遅くなって悪い。三班、全員そろった」

 いつもと同じ、石膏(せっこう)みたいな無表情。
 中条はコンパスの長い足で、スタスタとクラスメイトたちの中に入っていく。

 な、な、な、なんなの、この人っ !?



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