ナイショの妖精さん1
 ……なっとくいかない。

 ぜんっぜん、なっとくいかない。


 校外学習の次の日。放課後の図書室で。

 あたしは、『浅山の歴史』って題名の本を開いて、「浅山砲弾倉庫」って書かれた項目を、にらみつけてる。

 本で顔が隠れちゃうくらい、じっと見ているけど、読んでるわけじゃない。
 あたしの頭は、病気の妖精と、逃げてきた中条のことで、もんもん。

 ほかの三班の子たちは、白紙の模造紙を前にして、中条の意見をきいている。

 模造紙にシャープペンでうすく線を引きながら、「ここから先は説明で」「ここは写真の位置」って指示を出してる中条。

 なによ! しらっと冷めた目しちゃって。

「りょ~かい! さっすが中条君、まとめるのもうまいんだ~。じゃ、わたしは地図描くね。こら、誠! 発表する紙なんだから、落書きしないっ!」

 はりきりまくりのリンちゃん。

「おい。和泉は、写真の下の説明担当だ」

 上から手がのびてきて、パッと、本を取りあげられた。

 顔をあげたら、あたしを見くだしている琥珀色の目。

「だから、今、説明書くために、本読んでるのっ! 返してよっ!! 」

 あたしの声からトゲが出た。

 リンちゃんが、「え?」っていう目であたしを見る。

 そうかもしれない。

 あたしみたいな、アホっ子が、天下の中条に言い返すなんて、はたから見たら想定外なのかもしれない。

 でもあたし、中条なんかもう、ぜんっぜん怖くない!

 こんなヤツ、ただのビビリのヘタレじゃんっ !!

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