凪がくれた勇気
難聴の少年との出逢い

歩侑
「あ、そうだ…学校の図書館、明日から夏季休業だ。」
夏休みに入って間もなく、
私、手塚 歩侑はカレンダーを見ながら溜息をついた。
本の世界だけが逃げ場の私にとって、
学校の図書館が閉まる夏休みはとても憂鬱だった。
私は小さい頃から
極度の人見知りに悩んでいた。
人と話そうとすると
緊張して声が出なくなってしまう。
歩侑
「あ…うぅ…。」
同級生
『フウちゃん、どうしたの?』
歩侑
「え…えぅ…。」
同級生
『何か話したいことがあるの?』
歩侑
「あ…。」
同級生
『…ごめん、用がないなら私、行くね。』
相手が同級生でさえこんな感じだから、
仲の良い友達ができたことがない。