不幸を呼ぶ男 Case.2
【深夜・都内】
サイレンが
夜の静寂を切り裂く
覆面パトカーが
鬼のような形相で
首都高速を疾走していた
運転しているのは石松
その目は
獲物を追う獣のように
赤く、ギラギラと燃えている
石松:(今回の事件だけは)
石松:(クソみたいな権力に、負けるわけにはいかねぇ)
石松:(全て、暴いてやる)
石松:(桐生院親子も)
石松:(……ファントムも!)
彼は
さらに、アクセルを踏み込んだ
目指すは、麻布警察署
全ての駒が、そこに揃う
【麻布警察署・留置所】
カチャリ、と
檻の鍵が開く音がした
ベッドに横たわっていた桐生院琉星が
気だるそうに、体を起こす
目の前に
見知らぬ看守が立っていた
滝沢:「琉星様」
滝沢:「お母様に言われ、お迎えに参りました」
その言葉を聞いた瞬間
琉星の顔に
下衆な笑みが浮かんだ
滝沢:「ただ、警視庁に移送する、という体でここから出ます」
滝沢:「そのように、演技をお願いします」
琉星は
全てを理解したように、頷いた
滝沢の耳のイヤホンから
璃夏の、静かな声が聞こえる
璃夏:『……移送命令、送信しました』
滝沢は
琉星に手錠をかけると
その上から布を被せ、見えないようにした
そして、二人で、檻から出る
留置所から警察署内へと続く廊下
何人かの同僚の警察官と、すれ違う
同僚:「お、窪田。どこ行くんだ?」
滝沢:「おう。もう一度、取り調べするからってな」
滝沢:「本庁の連中が、外まで連れて来いって言うんだ」
滝沢:「……全く、人使いが荒いよな」
滝沢は
本物の窪田のように
愚痴をこぼしてみせた
そして
誰にも聞こえないほどの声で
イヤホンに、呟く
滝沢:「……車を、正面まで回せ」
【車内・麻布署駐車場】
璃夏は
その指示を受け
ノートパソコンの、エンターキーを押した
璃夏:「今から5分間、署内の全ての監視カメラは、ダウンします」
彼女は
エンジンを始動させ
駐車場から、麻布署の正面玄関へと
車を、ゆっくりと走らせた
計画の、最終段階を
実行するために