ろくな死に方しねぇから
 宮間依澄派か。蓑島律輝派か。二人がよく対比されるのは、白と黒のように、光と闇のように、善と悪のように、天と地のように、雲と泥のように、目に見える印象が全く真逆だからであった。

 殺し屋とヴァンパイア。追う者と追われる者。クラスメートに隠していることすら真逆の二人。その中にある唯一の共通点と言えば、人を、あるいはヴァンパイアを、平気で殺していることだろう。いつしか律輝も、殺しに躊躇はなくなっていた。

「宮間くんってさ、好きな人とかいるの?」

「私もそれ気になりすぎる。告白されても全部断ってるじゃん? やっぱり他に好きな人がいるから?」

 クラスの女子は依澄に慣れている。そこにある感情は恋愛的な好意ではなく友情的な親しみだ。人気者の依澄と同じクラスであるという優越感も含まれているかもしれない。つまりは依澄の上っ面しか見ていない。依澄の残酷さを知らない。

 依澄が殺した人間の遺体は、目を背けたくなるくらい酷い有様だった。身体のあちこちに喰いちぎられたような痕があり、内臓すら引っ掻き回されていた。血液という血液を吸い尽くし、骨の髄までしゃぶり尽くしているのだ。

 あまりの惨たらしい損傷に、クマのような野生動物に襲われたのではないかと疑ったが、ここにクマなどは生息していない。他の野生動物の目撃証言もない。派手に喰い荒らされていることから、一般的な人間の所業だとも思えない。よって、ヴァンパイアの仕業だと断定された。

 ヴァンパイアは、肉を喰いちぎろうと思えばできるほどの鋭い牙を持つ。ほとんどのヴァンパイアは、了承を得てパートナーなどの血液を吸う際、人間を傷つけないようにある程度の加減はしているという。その加減が、依澄はできない。いや、しないと言った方が正しいだろうか。依澄は本能を制御できず暴走しているわけではない。正気のまま、人を喰って食欲を満たしているのだ。
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