鬼課長は、ひみつの婚約者
私は、唇をきつく噛み締める。こんな情けない姿を、彼に見せたくなかった。
完璧な彼に、私を認めてほしかった。
けれど、現実は、情けないほどに重大なミスを犯した自分だ。
「……大丈夫だから。今日はもう、寝るね」
私はそう言うと、瑛斗の腕を振り払って寝室に向かおうとした。
そのとき、後ろから強い力で抱きしめられた。
「嘘だ。莉子の体、震えているじゃないか。何があったか、話してくれないと困る」
瑛斗の優しい声に、今にも泣き出してしまいそうになる。
でも、ここで彼の温かさに逃げてしまったら、私はいつまでも一人で立てない。
「……本当に、大丈夫だから」
このミスは、私の力で乗り越えなければならない試練だ。そう、自分に言い聞かせるように、私は必死に彼の腕から逃れ、寝室の扉を閉めた。
扉の向こうから、瑛斗のため息が聞こえる。
彼の優しい心遣いを拒絶してしまったことに、胸が痛んだ。
この夜、私は一睡もできなかった。布団の中で一人、ミスを犯した自分を責め続けた。
そして、翌朝。私は、決意を胸に出社した。
デスクに荷物を置くと、私はすぐに瑛斗のデスクへ向かう。
「あの……望月課長。大変申し訳ございません。企画書の最終チェックで、致命的なミスが見つかりました」
声が震えて、うまく言葉が出てこない。
瑛斗は眉一つ動かさずに、私から企画書を受け取ると、鋭い視線でページをめくり始める。