ツキ ト タイヨウ
それから、俺は毎日、放課後になると図書室に通うようになった。
誰かに理由を聞かれても、答えようがない。ただなんとなく、という軽い気持ちだった。
でも本当は、あの窓際の席に座る、あの横顔が見たかった。
これが片想いってやつなのか。いや違う。
認めたいような認めたくないような、不思議な感覚だった。
彼女は、俺が近くに座っても、相変わらず本に夢中だった。
俺は彼女の向かいに座り、ただ机の上の本を読んでいる。
普段なら、この静寂に耐えられずに教室に戻るか、どこかで時間を潰すだろう。
でも、彼女の隣にいるこの時間は、なぜか居心地がよかった。
彼女がページをめくる音、窓の外で吹く風の音、遠くで聞こえる部活の声。
その一つ一つが、俺のつまらなかった世界に、色を与えていくようだった。
彼女が顔をあげた。彼女をみていた俺と目が合う。
やばい...見てたことばれたかも。内心焦っていたが、そんな心配とは裏腹に、
「珍しいね。図書室にいるの。」
彼女は一言そう呟いて、本に戻った。
彼女が読んでいる本が、俺もみたことのある古典だと気づいた。 俺は、いつものように彼女の向かいに座って、その本のタイトルをじっと見つめる。彼女の目が、活字を追って動くたびに、俺の心も静かに揺れた。
「…それって、シェイクスピア…だっけ」
口から出た言葉は、自分でも驚くほど、不自然だった。 彼女は、ゆっくりと顔を上げた。その瞳は、墨を流したように真っ黒で、真っ直ぐに俺を捉えていた。
「うん、そうだよ。十二夜」
彼女は、少しだけ、微笑んだ。 その笑顔は、今まで見たことのない、とても優しい、笑顔な気がした。
その瞬間、図書室の扉が、勢いよく開いた。
「陽向!こんなとこいたのかよ、バスケしようぜ!」
クラスメイトの、声の大きいやつ(男)が立っていた。俺は慌てて振り向く。 月子は、俺たちのやり取りをただ静かに見ていた。そして、また本に目を戻した。
「おい、行くぞ」
腕を引かれ、俺は図書室を後にした。 振り返ると、月子はもう、本のページをめくっていた。
彼女の世界は、何も変わらない。 でも、俺の世界は、徐々に動き始めていた。
誰かに理由を聞かれても、答えようがない。ただなんとなく、という軽い気持ちだった。
でも本当は、あの窓際の席に座る、あの横顔が見たかった。
これが片想いってやつなのか。いや違う。
認めたいような認めたくないような、不思議な感覚だった。
彼女は、俺が近くに座っても、相変わらず本に夢中だった。
俺は彼女の向かいに座り、ただ机の上の本を読んでいる。
普段なら、この静寂に耐えられずに教室に戻るか、どこかで時間を潰すだろう。
でも、彼女の隣にいるこの時間は、なぜか居心地がよかった。
彼女がページをめくる音、窓の外で吹く風の音、遠くで聞こえる部活の声。
その一つ一つが、俺のつまらなかった世界に、色を与えていくようだった。
彼女が顔をあげた。彼女をみていた俺と目が合う。
やばい...見てたことばれたかも。内心焦っていたが、そんな心配とは裏腹に、
「珍しいね。図書室にいるの。」
彼女は一言そう呟いて、本に戻った。
彼女が読んでいる本が、俺もみたことのある古典だと気づいた。 俺は、いつものように彼女の向かいに座って、その本のタイトルをじっと見つめる。彼女の目が、活字を追って動くたびに、俺の心も静かに揺れた。
「…それって、シェイクスピア…だっけ」
口から出た言葉は、自分でも驚くほど、不自然だった。 彼女は、ゆっくりと顔を上げた。その瞳は、墨を流したように真っ黒で、真っ直ぐに俺を捉えていた。
「うん、そうだよ。十二夜」
彼女は、少しだけ、微笑んだ。 その笑顔は、今まで見たことのない、とても優しい、笑顔な気がした。
その瞬間、図書室の扉が、勢いよく開いた。
「陽向!こんなとこいたのかよ、バスケしようぜ!」
クラスメイトの、声の大きいやつ(男)が立っていた。俺は慌てて振り向く。 月子は、俺たちのやり取りをただ静かに見ていた。そして、また本に目を戻した。
「おい、行くぞ」
腕を引かれ、俺は図書室を後にした。 振り返ると、月子はもう、本のページをめくっていた。
彼女の世界は、何も変わらない。 でも、俺の世界は、徐々に動き始めていた。