本気の恋も三度まで〜恋愛したくなったら同僚がチャンスをくれました
茉琴は仕事を始める気持ちにもなれず、デスクに置きっぱなしになっていた季節外れのファッション誌をパラパラと捲る。どのページにも指が止まらないまま裏表紙まで捲ると、丸めてゴミ箱へ放り込んだ。

大きく息をつき、氷が溶けて薄まったカフェオレを一気に飲み干すと、パソコンを立ちあげる。
さっさと終わらせて私も早く帰ろう、とデータを開いた。

「水野、大丈夫か?」

隣席から同僚の神谷圭人(かみやけいと)が控えめに声をかける。
圭人は茉琴の足元のバッグの方に目線を向けると、渡すつもりだったんだろ?と茉琴だけに聞こえるくらいの声で呟いた。
茉琴の手が止まる。

「神谷!ご飯行こ!」
茉琴は何も言うな!と、怒る代わりに圭人をひと睨みし、
今日中の仕事を急いで済ませると、圭人をいつもの居酒屋に連れ出した。


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