野いちご源氏物語 三七 鈴虫(すずむし)
それから尼宮(あまみや)様に今日の心構えをお教えになる。
中央に仏様が置かれて、お寺のようになってしまったお部屋をご覧になると、源氏(げんじ)(きみ)はお悲しい。
「このような会をあなたと開くことになるとは思っていませんでした。もう尼君でいらっしゃいますから、この世で夫婦らしくすることはできません。せめて私たちが同じ(はす)の上に生まれかわることをお祈りください。それでもまた(めぐ)り会えるのはずいぶん先のことでしょうけれど」

「同じ蓮の上に生まれかわったとしても、あなたはすぐによそへ行ってしまわれるでしょう」
尼宮様がつれなくおっしゃるので、
「ご冷淡(れいたん)なことだ」
とお笑いになる。
すぐに寂しそうなお顔をなさるのだけれど。
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