野いちご源氏物語 三七 鈴虫(すずむし)
源氏の君は尼宮様のお世話を熱心になさる。
若くして尼にしてしまったことを、ご自分だけの責任ではないけれど申し訳なくお思いなのでしょうね。
入道の上皇様は、すでに尼宮様のために新しいお住まいをご用意なさった。
「完成した仏像をそちらに置いて、この機会に六条の院から引っ越しなさった方が世間体がよいでしょう」
とお勧めなさったけれど、源氏の君が反対されたの。
「離れていては私が心配なのでございます。朝晩のご挨拶さえ気軽にできないようでは誠意もお見せできません。老い先短い私ですが、尊い内親王様を頂戴した以上、命のあるかぎり真心をこめてお世話させていただきたいと存じます」
その一方で、ご自分の死後は尼宮様がそちらへお引越しなさるだろうと想定していらっしゃる。
お住まいの手入れをさせ、内親王として朝廷からお受け取りになっている財産は、そちらの蔵に入れておかれる。
さらに新しく蔵をお建てになると、尼宮様が上皇様から相続なさった宝物などを運び込むようお命じになった。
財産や宝物を六条の院に置いたままにしたら、将来、どなたのものか分からなくなって揉め事になってしまうかもしれない。
それを避けるために、これは女三の宮様の財産と宝物だと、はっきり分けて厳重に管理しておかれるの。
その上で、日々のお暮らしにかかる費用は源氏の君がお世話なさる。
若くして尼にしてしまったことを、ご自分だけの責任ではないけれど申し訳なくお思いなのでしょうね。
入道の上皇様は、すでに尼宮様のために新しいお住まいをご用意なさった。
「完成した仏像をそちらに置いて、この機会に六条の院から引っ越しなさった方が世間体がよいでしょう」
とお勧めなさったけれど、源氏の君が反対されたの。
「離れていては私が心配なのでございます。朝晩のご挨拶さえ気軽にできないようでは誠意もお見せできません。老い先短い私ですが、尊い内親王様を頂戴した以上、命のあるかぎり真心をこめてお世話させていただきたいと存じます」
その一方で、ご自分の死後は尼宮様がそちらへお引越しなさるだろうと想定していらっしゃる。
お住まいの手入れをさせ、内親王として朝廷からお受け取りになっている財産は、そちらの蔵に入れておかれる。
さらに新しく蔵をお建てになると、尼宮様が上皇様から相続なさった宝物などを運び込むようお命じになった。
財産や宝物を六条の院に置いたままにしたら、将来、どなたのものか分からなくなって揉め事になってしまうかもしれない。
それを避けるために、これは女三の宮様の財産と宝物だと、はっきり分けて厳重に管理しておかれるの。
その上で、日々のお暮らしにかかる費用は源氏の君がお世話なさる。