温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛
ふるえる言葉と、真っ赤に染まる頬。
そのすべてが、圭吾の理性を容赦なく奪っていった。

圭吾の唇が、何度も繊細なレース越しに触れては離れる。
わざと焦らすように、甘く長い口づけを繰り返すたび、波瑠の体は小さく跳ねた。

「……あ……っ」
耐えきれずに漏れる声。
そのひとつひとつが、圭吾をさらに昂らせていく。

圭吾の指先がそっと肌をなぞる。
優しいのに執拗で、甘美な責めは逃げ場を与えてくれない。

背中を反らし、指先をシーツに沈める波瑠。
その姿を見つめながら、圭吾の声が低く震えた。
「……たまらなく綺麗だ」
「……あん……っ」
何度も焦らされ、甘い熱に溺れていく。
もう限界だと悟った瞬間、波瑠の唇から震える声が零れた。

「……もっと……もっとして……圭吾……」

その視線を受け止めた圭吾の喉が、ごくりと鳴った。

潤んだ瞳と震える吐息に、圭吾の胸は激しく揺さぶられた。
「……波瑠……」
その名を呼ぶ声は、切なく、そして狂おしいほどに熱を帯びていた。

その夜、圭吾は波瑠を離さなかった。
何度も、何度でも確かめ合うように。
まるで永遠を誓うように…。



カーテン越しに柔らかな冬の朝日が差し込む。
ベッドの上でまだ少し眠たげな波瑠に、圭吾がコーヒーカップを手渡した。

「……波瑠、実は年末年始はハワイで過ごすんだ」

「ハワイ?」
目を瞬かせて問い返す波瑠に、圭吾はふっと笑みを浮かべる。

「娘との約束でね。少し一緒の時間を作ろうって」

「わあ……いいね。お嬢さんと過ごすなんて、素敵だわ」
波瑠の声には、自然と憧れと温かさがにじむ。

「本当は俺としては……波瑠といたい。来年に延期してでもいいくらいだ」

囁くような圭吾の言葉に、波瑠は小さく首を振った。
「その言葉だけで十分よ、ありがとう。でもね……来年の年末年始を娘さんと一緒に過ごせるかどうかなんて、誰にもわからないでしょう? 彼氏だってできるかもしれないし。今年がチャンスよ。楽しい思い出をたくさん作ってきて」

「……年始明けにはまたハワイで仕事なんだ。だから……また二週間も会えない」
「じゃあ、帰ってくるのを待っているわ」

そう言って見せた波瑠の笑顔を、圭吾は胸に焼きつけるように見つめた。
次の瞬間、強く抱きしめていた。

「……はあ、行きたくない」
「何言ってるんですか。父親でしょ?」

呆れたように笑う波瑠の頬は、ほんのり赤く染まっている。
その表情に、圭吾の胸はさらに締めつけられた。

父親であることも、男であることも、やめられない。
だが今だけは、この腕の中から彼女を離したくなかった。

「で、いつ発つの?」
波瑠が問いかけると、圭吾は腕の中で彼女を離さぬまま、小さく息を吐いた。

「水曜日だ。だから……火曜日に会いたい」
圭吾が低い声で切り出す。

波瑠は一瞬、言葉を選ぶように視線を落とした。
「ごめんなさい。……その日はもう、先約があるの」

「……先約?」
わずかに眉をひそめる圭吾。グラスを置く音が、静かな部屋に響いた。

波瑠はためらいながらも、正直に頷いた。
「うん。数ヶ月前から決まってたの」

「……誰と会う?」
圭吾の問いに、波瑠は少し間を置いて答えた。

「同期と元同期よ。今は夫婦になってるの。……NYに住んでいて、三年ぶりにお正月休みで帰って来てるの」

「NYから……?」
圭吾の眉がわずかに動く。

「そう。だから、今回を逃したら次はいつ会えるかわからないの」

「……そうか」
圭吾の声音には嫉妬がにじんでいたのを、波瑠は気づいていなかった。

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