温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛
轟音の中、柏木が声を張り上げる。
「私ね、昔はカメラマンとして世界中を飛び回っていたんですよ!」
圭吾が思わず視線を向ける。
「カメラマンを?」
「ええ。アフリカのサバンナから、南極の氷まで。ハワイに腰を落ち着けたのは十数年前ですがね」
陽気に語る柏木の声は、ヘリの振動に混じりながらも不思議と心地よく響いた。
「なるほど……」
気づけば圭吾も自然と身を乗り出し、ハワイ島の歴史や自然の話を交えた柏木の世界に引き込まれていた。
互いに冗談を交わし、思いがけず意気投合する。
雄大な滝を間近に眺め、機体が旋回して帰路につく。
その時、綾香が額に手を当て、小さく呻いた。
「……気分悪い……」
「綾香!」
圭吾が慌てて支える。
顔は真っ青で、機体が着陸するや否や、外に出てそのまま吐き出してしまった。
服と髪は汚れ、肩で息をしている娘の姿に、圭吾の胸が締めつけられる。
「無理するから……」
背をさすりながら、圭吾は必死に声をかけた。
その傍らで柏木が口を開く。
「自宅がすぐ近くなんです。少し休んでいってください」
「……ありがとうございます」
圭吾は深く頭を下げた。
「それでは、ご厚意に甘えさせていただきます」
玄関先で迎えてくれたのは、柏木の妻・由紀子だった。
「まあまあ、大変でしたね。どうぞお入りください」
「今日は急なところをお邪魔してしまい……申し訳ありません」
圭吾は娘を抱きかかえたまま頭を下げ、リビングの畳にそっと綾香を下ろした。
由紀子は穏やかな笑みを浮かべ、すぐに膝をついて綾香に声をかける。
「お嬢さんはお預かりしますね。ほら、綾香ちゃん、立てる?」
「……はい」
青ざめた顔で小さく頷く綾香。
「じゃあ、服を着替える前にシャワーを浴びちゃいましょう。さっぱりしたら少し楽になるわ」
「……よろしくお願いします」
圭吾は改めて深く頭を下げた。
圭吾と柏木が世間話をしていると、由紀子がリビングに戻ってきた。
「いま、ゆっくり眠っていますよ」
「申し訳ありません……」
圭吾が頭を下げると、由紀子はにこやかに微笑んだ。
「いいんですよ。松田さん、おなかは空いていますか?」
「はい、すこし」
「じゃあ、支度しますから、お夕飯を食べて行ってください」
「そんな……」
「綾香ちゃんも疲れが出ているみたいですし、もう少し眠りそうですから。汚れたお洋服の洗濯もまだ終わっていませんし。
大したものはお出しできないですけど、主人も喜びますから」
圭吾は少し考えてから、素直に頷いた。
「そうですか……それではありがたくいただきます」
「何かアレルギーや嫌いなものはありますか?」
「いえ、特には」
「では魚にしますね」
「それは嬉しいですね、ありがとうございます」
台所から漂いはじめる香りに、心なしか空気が和む。
柏木が冷蔵庫から酒瓶を取り出し、二つのグラスを並べた。
「さ、まずは一杯。旅先での縁に乾杯しましょう」
「……ええ」
圭吾はグラスを受け取り、柏木と軽く杯を合わせた。
南国の夜風が流れ込むリビングで、静かな晩酌が始まった。
「私ね、昔はカメラマンとして世界中を飛び回っていたんですよ!」
圭吾が思わず視線を向ける。
「カメラマンを?」
「ええ。アフリカのサバンナから、南極の氷まで。ハワイに腰を落ち着けたのは十数年前ですがね」
陽気に語る柏木の声は、ヘリの振動に混じりながらも不思議と心地よく響いた。
「なるほど……」
気づけば圭吾も自然と身を乗り出し、ハワイ島の歴史や自然の話を交えた柏木の世界に引き込まれていた。
互いに冗談を交わし、思いがけず意気投合する。
雄大な滝を間近に眺め、機体が旋回して帰路につく。
その時、綾香が額に手を当て、小さく呻いた。
「……気分悪い……」
「綾香!」
圭吾が慌てて支える。
顔は真っ青で、機体が着陸するや否や、外に出てそのまま吐き出してしまった。
服と髪は汚れ、肩で息をしている娘の姿に、圭吾の胸が締めつけられる。
「無理するから……」
背をさすりながら、圭吾は必死に声をかけた。
その傍らで柏木が口を開く。
「自宅がすぐ近くなんです。少し休んでいってください」
「……ありがとうございます」
圭吾は深く頭を下げた。
「それでは、ご厚意に甘えさせていただきます」
玄関先で迎えてくれたのは、柏木の妻・由紀子だった。
「まあまあ、大変でしたね。どうぞお入りください」
「今日は急なところをお邪魔してしまい……申し訳ありません」
圭吾は娘を抱きかかえたまま頭を下げ、リビングの畳にそっと綾香を下ろした。
由紀子は穏やかな笑みを浮かべ、すぐに膝をついて綾香に声をかける。
「お嬢さんはお預かりしますね。ほら、綾香ちゃん、立てる?」
「……はい」
青ざめた顔で小さく頷く綾香。
「じゃあ、服を着替える前にシャワーを浴びちゃいましょう。さっぱりしたら少し楽になるわ」
「……よろしくお願いします」
圭吾は改めて深く頭を下げた。
圭吾と柏木が世間話をしていると、由紀子がリビングに戻ってきた。
「いま、ゆっくり眠っていますよ」
「申し訳ありません……」
圭吾が頭を下げると、由紀子はにこやかに微笑んだ。
「いいんですよ。松田さん、おなかは空いていますか?」
「はい、すこし」
「じゃあ、支度しますから、お夕飯を食べて行ってください」
「そんな……」
「綾香ちゃんも疲れが出ているみたいですし、もう少し眠りそうですから。汚れたお洋服の洗濯もまだ終わっていませんし。
大したものはお出しできないですけど、主人も喜びますから」
圭吾は少し考えてから、素直に頷いた。
「そうですか……それではありがたくいただきます」
「何かアレルギーや嫌いなものはありますか?」
「いえ、特には」
「では魚にしますね」
「それは嬉しいですね、ありがとうございます」
台所から漂いはじめる香りに、心なしか空気が和む。
柏木が冷蔵庫から酒瓶を取り出し、二つのグラスを並べた。
「さ、まずは一杯。旅先での縁に乾杯しましょう」
「……ええ」
圭吾はグラスを受け取り、柏木と軽く杯を合わせた。
南国の夜風が流れ込むリビングで、静かな晩酌が始まった。