溺愛している娘は俺の宝物だった

事情は過酷であっても

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 放課後、私はメールどおりに、昨日の公園の駐車場へ行く。

 同じように、黒塗りのベンツが停まっていた。

 彼は、駆けてくる私に気づき、車から降りて手を差し伸べてくる。

「あ、あの……」

「おいで」

 彼は、退いた私の手首を掴み、抱き寄せる。

 昨日と同じように、私は彼にそのまま後部座席へ引き込まれた。

 車内で精悍な胸の中へかき抱かれ、私は呆然としている。

 「……会いたかった」

 彼は、掠れた艶やかな低い声で囁くように呟く。

 小刻みに震えてしまう私を、彼はぎゅっと力を込めてきたーー。


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