俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
6.
……白い。

目の前に広がるのは、白い世界。

ぼやっと全体的に滲んでいるのか、霞んでいるのか。

「やっと気づいたのね」

にこりと、僕の鼻先30センチくらいのところで女神様がにこりと微笑んだ。
そうか、ここは天国か。

俺はほっとする。
死期が近いって巫女さんも言ってたしなー。
どうせ死ぬなら、美人な女神様のいる天国にいけるほうがマシってもんだよな。

「そうか……気づきやがったか」

チッと忌々しそうな舌打ちが聞こえた、気がする。
しかも、このテノールの声は男性のものだ。
まあ、あれだな。天国といえども優しい美女ばかりいるってわけじゃないだろう。

「でも、破魔矢がぐさりと当たっちゃったんだから。
このくらいのダメージは仕方が無いわ」

「そうだよなぁ。
同じ破魔矢が当たっても、イケメンは無傷だし、デブだと瀕死になるっていう良い見本なんじゃないか?
それにしても、この細腕でわざわざ俺を救ってくれてありがとう」

「あら、私、あなたを救った覚えなんて無いわよ。
除霊すると強くなれるし、それに実際殿に矢を当てたのはドウちゃんじゃない」

「そこまで、思ってくれていたなんて。
水臭いじゃないか。もっとはっきり言ってくれればいいんだよ。
そりゃ分かる。
こんなイケてる男の瞳を真っ直ぐに見て告白するのがどれほど大変か、分かるよ。
俺だって毎朝鏡を見る度に自分の瞳に釘付けになってしまって、そこから目を放すのにものすごい労力を使っているんだからね。
そうだ、だから巫女ちゃんから言う必要は無い。
むしろ俺から……」

「そうね、もっとはっきり言ったほうが良かったのかも。
アナタに憑いた霊、確かに除霊したけどあんまり良い霊だったから、成仏はさせてあげなかったわ。
そのうち、周りに出てくるかもね。まぁ、一度除霊された霊は二度と人間に憑けないから心配しなくていいけど」

「そうか」

「そうよ」

噛みあわない会話が、何故かすっきり終わっていく。
天国とは、かくも微妙な場所なのか……

俺、上手くやっていけるかな?
ちょっと自信がなくなった。
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