俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
……いやいや。ちょっと待て。

俺は今の会話を頭の中で巻き戻す。

イケメンは無傷で、デブは瀕死……

殿とか、巫女ちゃんとか……

うーん、生前よく聞いた言葉だ。

っていうか、

っていうか、

頭が徐々に回ってくると、生前も何も、それを喋っている人の姿さえ忌々しくも鮮明に脳裏に浮かんでくる。

あれは、容姿だけは一級品だが性格と人格に難のある、俺の先輩の声じゃないのか?



本当にここは天国なのか?!

俺は、そこでようやくがばりと身体を起こした。

すぐ傍の折りたたみ式の椅子に座っていた女神様……でなく、女神のような美しさを兼ね備えた巫女さんが、制服姿でにこりと笑っていた。

「良かった。バナナくんが起きてくれて」

「そうよ、毎日ここに通ってくださってたんだから。
あなた、お礼をいいなさいよ」

見れば、丁度母がドアから入ってきたところだった。

全体的に白い……ここは、病室だろうか。

「はぁ、それはどうも、ありがとうございます」

なんとなく釈然としない気もするが、俺はとりあえず礼を言う。
にこり、と、巫女さんは極上の笑顔を浮かべた。

「かまわないわ、気にしないで」

……やはり、何か釈然としない。

気のせいだろうか。
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