桜が咲く時まで、生きていたい
別荘までは宗一郎のお母さんに送ってもらっている。

その時、姫奈自身のスマホではなく、小牧先生との連絡用に渡されたスマホにピロンと通知が来た。

『一足早く着いたよ』

「なんて?」

「羽田さん、着いたって」

「あらあらぁ、早いわねぇ」

わかりました、とだけ送って連絡用のスマホをバックにしまう。

道中、宗一郎のお母さんとも喋りながら、楽しく過ごしていた。

時々、お母さんが宗一郎の小さい頃のおそらく本人にとっては恥ずかしいであろう話をぶっ込んでくるので、宗一郎が必死に止めていた。

「さぁ、着いたわよぉ!」

そう言われて車から降りると、立派な日本家屋が見えた。

ちゃんと入り口にも門が建てられており、庭は日本庭園のようだった。

「ここ、綺麗なのだけれど、維持費がねぇ」

どうやら、ここに来るのは久しぶりらしく、荷物を下ろしてくれている途中、愚痴ていた。

「そんなこと言いながら、手放そうとしないのは母さんだろ」

「まぁ、そうなんだけどねぇ」

羽田も合流し、車に積まれているものたちを全て屋敷に入れている。

当の私はというと、玄関も見ることができる縁側で座って待っていたのだ。

手伝うと言ったのだが、その場にいた全員に止められてしまった。

「さて、荷物も運びこんだことだし、お邪魔虫は退散しようかしらねぇ」

「お邪魔だなんてそんな」

と姫奈は言ったが、あの子も今日をとても楽しみにしていたの。完全に二人きりにはしてあげられないけど、楽しんでね。

と言って帰ってしまった。

どうやら、他のみんなは午後から来るらしく、わずかな時間ではあるが、宗一郎と二人で過ごす時間を組まれているようだ。

もちろん、羽田さんはいるし、普段ここを管理している人はいるらしいが、それでもやはり嬉しい。

「それでは、私は色々と用意することがあるので、お二人はごゆっくりどうぞ」

「すみません、私のために…」

「いや、姫奈ちゃんが謝ることじゃないよ。それに、こんな形ではあるけど、泊まりなんてここ数年してなかったから、この機会に楽しませてももらうから」

それじゃ、と言って2階の方へ上がってしまった。

「姫、そこは暑いだろ。中で涼まないか」

「そうだね」

そう言って立ち上がって移動する時にも宗一郎は手を貸して補助してくれる。

なぜかそのまま、宗一郎の膝の上、そして腕のなかに閉じ込められてしまった。

ちょうど庭掃除をしていたお手伝いさんが、まぁ、と驚くのを遠くに聞いたような気がした。
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