すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 僕はセリスに触れるだけの口づけをすると、すぐに離れた。
 しかしセリスは僕に抱きついて自分からもう一度口づけをしてきた。
 正直、すごく不快だったが、僕はそれに耐えた。

 こういった行為は夫婦の寝室でおこなうものだろう。
 なぜ外でしなければならないのだろうか。
 社交界の話題の中では、どうやら女性は夜空の下とか庭園とか、そういったところで口づけするのが好きらしい。

 僕にはまったく理解できない。
 だが、セリスが望むことを拒絶などできないから、そのたびに僕は必死に自分を抑える。


 それも結婚式までの我慢だ。
 セリスが妻になれば、夫の僕の命令には逆らえないのだから。

 結婚した日から、僕は主人となる。
 そうすればセリスに堂々と命令ができる。
 彼女は僕の言うことに拒否できなくなる。
 夫とはそういうものだ。

 それまで、できるだけ紳士的な態度で彼女に合わせるつもりだ。


 大丈夫だ。
 僕たちはともに傷ついた者同士、うまくやっていけるだろう。
 世間の同情と称賛を浴びながら、これからの人生が輝いていくんだ。

 レイラ、君が反省するなら、僕はいつか君を許せる日が来るかもしれないよ。

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