すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 僕は彼の話を聞き流し、静かになったところで切り出した。

「僕はセリスとの婚約を解消して、やはりレイラと結婚しようと思います」
「ああ、復縁してくれるのか。それはいい。ただしレイラが私の仕事を必ず果たすことが条件だ」
「以前と変わりません」
「それならいい。すべて元通りだ。いやあ、よかったよかった」


 正直、この男がこれほど愚かだとは思わなかった。
 僕がレイラと付き合っていたときは愛想よくしていたから気づかなかったが、セリスと付き合い出してからは露骨に自分の本性を剥き出しにしてきた。

 レイラは僕に嫌われたくないから父親の愚痴を一切言わなかったのだろう。
 その健気な姿に、今なら同情できる。

 この男にレイラを返す気などさらさらない。 
 レイラが僕と結婚して侯爵家に入れば、この男の仕事などさせるつもりはない。
 彼女には侯爵夫人として果たすべき務めがあると言えば問題ないだろう。


 だが、とにかくまずはレイラを取り戻すことだ。
 あとはどうにでもなる。

< 158 / 231 >

この作品をシェア

pagetop