すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 胸が痛くなるのは、どこかにまだ同情や哀れみが残っているからだろう。
 けれど、それでもセリスが私の腕を壊し、私を騙して陥れようとしたことは許せない。

 これは、私にできる最大の彼女への復讐だ。


「あなたが本当に求めていたのは、私の立場でも力でもない。母親の愛情よ」
「その口を塞ぎなさいよ! レイラのくせに……偉そうに言わないでっ!」

 次の瞬間、セリスが私を突き飛ばした。
 思いがけない力だった。

 体がよろめき、背中が冷たい手すりにぶつかる。
 どよめきと悲鳴が会場に広がる。

 本当に一瞬のこと。
 セリスの手が強く私を押し出していた。

「レイラなんていなくなればいいのよっ!」

 視界の端で、彼女の姿が遠ざかっていく。
 耳の奥で風が鳴り、重力が私を引きずり込んでいった。

 離れていくセリスの顔は、怒りと悲しみが入り混じったようにぐしゃぐしゃで、彼女は泣きながら震えていた。


「レイラ!」

 エリオスの声が届いたのを最後に、私は夜の闇へ落ちていった。

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