すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 アベリオの言葉に猛烈な苛立ちを覚えた。
 とっさに声を荒らげて言い返す。

「聞きたくないわ。まるで自分を正当化するような言い草に笑いが出ちゃうわね。あなたっていつもそう。表ではいい人でいたいのよ。あなたが実は自己愛に溺れていること、私が気づいていないとでも思ったの?」

 鼻で笑ってやると、アベリオは表情を歪めた。


「僕は侯爵家の存続のために生きているだけだ。世間の常識に合わせてね」
「あなたと結婚しなくて本当によかったわ。あなたの妻は苦労するでしょうからね」
「今の君に何を言われても響かないよ」

 その言葉を最後に、アベリオは静かに背を向けた。
 コツコツと足音が遠のいていき、再び牢の中は静寂に包まれる。

 ひとりになると、ぽたりと涙が落ちた。
 慌てて拭う。

 これは悔し涙よ。
 だって、私がレイラのために泣くはずがない。
 彼女が助かって安堵するなんて、そんなこと……あるはずがないわ。

 そう、これはきっと、私の負けを認めた涙。
 レイラに勝てなかった女の、惨めな涙なのよ。

 でも、これで本当にもう二度と、レイラと会うことはないわね。

 そう思うと、心のどこかで安堵する自分もいた。


 さようなら、レイラ。
 永遠に――

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