すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 結婚前、私は恋人と駆け落ちした。
 彼は穏やかで、静かな人だった。
 彼のまとう空気は透き通っていて、まるで神様のように美しかった。

 出会いは夜の森だった。
 両親に謂れのない罪で叩かれて家を飛び出したとき、月明かりの下で彼は光の絵を描いていた。
 家族に虐げられていた私の心を、彼の絵が救ってくれた。

 それから私たちは、毎日のように森の中で会った。
 やがて惹かれ合い、自然に愛し合うようになった。

 けれど、彼は敵国の人間だった。
 この恋は、許されなかったのだ。


 私たちが隠れて会っていることを両親に見つかった。
 彼は捕らえられ、拷問に近い罰を受けた。
 彼を救うために、私は両親の命令通り、彼との別れを受け入れた。
 そうするしか、彼の命を守る術がなかった。

 彼は解放されたが、酷い怪我を負っていたという。
 私は見送りさえ許されず、そのまま彼とは永遠に会えなくなってしまった。

 けれど、神様は私にひとつの奇跡を与えてくれた。
 私のお腹には、彼の子が宿っていたのだ。

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