すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 与えられた部屋は、私にはあまりにも不釣り合いなほど立派だった。
 高い天井には繊細な彫刻が施され、床には上質な絨毯が敷かれている。
 天蓋付きの大きなベッドに、やわらかいソファ、磨き上げられた家具など。
 伯爵家で使っていた部屋とはあまりにも違って、目が眩む思いだった。

「こんなに立派なお部屋をいただいて、申し訳ありません」

 思わずそう言うと、侍従のサイラスが恭しく一礼した。


「何かご入用がございましたら、遠慮なくお申しつけください」

 言葉も態度も穏やかで、胸の奥が熱くなる。
 ここは実家とはまるで別世界だ。
 昨日まで使用人にすら冷遇されていたのに、こんなふうに丁重に扱われて、嬉しくも戸惑ってしまった。


「このお部屋の香りは隣国カルベラから取り寄せた香水を使っております。お気に召されるといいのですが」
「素敵な香りです。私は異国へ行ったことがないので新鮮です」
「そうですか。では、ぜひご堪能くださいませ」

 サイラスはにこやかに笑って、一礼すると静かに退室した。

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