すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「ここまでしていただくなんて、かえって申し訳ないわ」
「俺は君のためならどんなことでもしよう。不可能と言われる治療でもやってみせる」
「なぜ、そこまで……?」
「君に、また絵を描けるようになってほしいからだ」

 思いもよらない言葉に息を呑む。
 また絵を描ける日がくるなんて、想像もしなかったから。


「これは俺のわがままに付き合ってくれた礼でもある。もし君が再び筆を握れる日が来たら、俺のために一枚描いてほしい。それで充分だ」

 エリオスは私の治療をする代わりに私の絵を要望している。
 これがただの交換条件ではないことくらい、私にだってわかる。

 彼はわざとそう言って、私の希望を見出してくれようとしているのだ。


 この右手で筆を握るなんて、到底考えられないことなのに、それを可能だと言ってくれる。

「右手がよくなったら、一番に、あなたのために絵を描くわ」

 言葉にすると、不思議な希望が胸に広がった。

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