すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「アベリオにもずいぶん会っていないわ」

 アベリオはフラン侯爵家の令息で、私の婚約者。
 とても穏やかで優しい性格で、私のことをよく気遣ってくれる。

 出会いは私がまだ貴族学校へ通っているときだった。
 彼は私のファンだと言って話しかけてきた。
 友だちのいなかった私には、彼の存在がとても励ましになった。


 彼に縁談を申し込まれたときは本当に嬉しくて、幸せになれると思った。

 しかし、縁談を受けた18歳から2年が経つが、その後の進展はない。
 それどころか、彼と会う頻度が極端に少なくなった。
 アベリオに会いたいと言っても、父が会わせてくれないのだ。

 私が結婚したら絵の仕事を減らさなければならないと思っているのだろう。
 私は嫁いでも絵の仕事を続けると言っているのに、父は信じてくれないようだ。


 私は父にとってただの金儲けの道具に過ぎない。
 母が生きていた頃も、父はほとんど家に帰らず、外で女性と会ったり酒や賭博に興じたりしていた。

 私の絵で稼いだお金もすべて父の懐に消える。
 理不尽だと思うけれど、もう少し耐えればきっと、この生活から逃れられる。

 そう信じてやってきたのに、ある日思いもよらない出来事が起こる。

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