すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「まったく。育ててやった恩を忘れたか。お前が生まれてここまで育つのに、いくら金がかかったと思っている? その分の金を返すまでは、結婚もさせてやらんからな!」
「そ、それは……」
「ふんっ! アベリオに会いたいなら、早く仕上げることだ」


 バタンと扉が激しく締まる音して、部屋に静寂が訪れる。
 私は肩を落とし、ため息をつくしかなかった。

「もう充分、養育費分は返したと思うのに……まだ足りないのかしら」


 母を亡くしてから、私は美しいドレスも宝石も奪われ、豪華な食事もさせてもらえず、令嬢教育も受けられなくなった。
 この部屋に閉じ込められ、ひたすら絵を描く日々だ。
 好きなこととはいえ、食事も睡眠も与えられないのは堪える。
 眠気で頭がぼんやりすれば空想が広げられず、お腹がすけば手も動かない。

「せめて、スープくらい……」

 私は空の器が置かれたままのテーブルを見て、静かにため息をついた。

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