もう分別のある 大人ですから
目覚ましのアラームが、耳元で甲高く鳴った。
夏希は反射的に手を伸ばし、止める。これで五回目だった。

毎朝十分おきに設定したアラームに、念のためのスヌーズ。最初は控えめなピアノの音なのに、最後には警告音のようになる。このやり方は高校生の頃から変わっていない。もう十年近くになる。

体は正直重いままだが、考える前に起き上がった。
仕事の日は、そうしないと動けなくなる。

隣では、恋人の冬馬が寝返りを打ち、わずかに眉をひそめている。さすがにこの音は不快だろうと思う。付き合い始めた頃は気を遣っていたけれど、半同居の生活にも慣れて、今は特に言われることもない。

顔を洗い、髪を整え、キッチンへ向かう。
食パンを一枚トースターに入れる。これは冬馬の分だ。

夏希は冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、それを食べながら、目玉焼きを焼いた。朝は胃が弱く、固形物はほとんど入らない。自分の分はこれで十分だった。

皿に盛りつけてテーブルに並べ、冬馬を起こす。

「朝だよ」

声をかけると、冬馬は少し間を置いて目を開けた。

「……もうこんな時間か」

頭を掻きながら起き上がるその様子は、いつも通り穏やかだ。

「私、先に出るね」
「うん。気をつけて」

特別なやり取りはない。
平日の朝は、だいたいいつもこんな感じだ。

金曜から日曜は冬馬の部屋で過ごし、平日はそれぞれの生活に戻る。その距離感が、今の二人にはちょうどいいと思っていた。

玄関を出て、腕時計を確認する。
予定通りの時間だった。

夏希は人の流れに紛れるように、駅へ向かって歩き出した。
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