Secret love.
数時間後、朝食も荷物の整理も買い物も終了させて、後はバスで会社の前まで戻るだけだった。それからは及川くんが車を遠くに停めていてくれるので、そこで待ち合わせをして一緒に帰るのだけど、実季が鍵返したりしてくるから先バス乗っててと言ってまだ来ない。

後ろの方の席で暖かさで少しうとうととしていて、すぐにでも寝れそうだった。


「空いてる?ここ。」


声を掛けられて通路側に目を向けると及川くんで、目が合うなり慌てて顔を逸らした。


「…空いてないし。実季が座るから。」

「新田さんならいっか。」

「良くないし!話聞け!」


平然と座ってくる及川くんにそうツッコむも、もう深く腰を下ろしてしまっている。


「新田さんなら大丈夫だよ。朝倉さんの隣空けてきたから。」

「…元々及川くんが座る予定の席じゃないの?それ。」

「え~、よくわかんない。」

「白々しいんだってば。」


話すのは昨日の夜以来で、朝も目は合わせたけどそれだけで今日は挨拶すらも交わしていなかった。何だか照れくさくて、まともに目も合わせられない。

窓の外を見て及川くんの方を見ないようにしていると膝上に乗せていた手を周りに見えない様にそっと握られる。


「ちょっと!」

「朝、起こしてくれたらよかったのに。」

「…それは、気持ち良さそうに寝てたから…。」

「朝起きた時に優花の姿が無かった時の方が、起こされるより嫌なんですけど。」


なんだこの不貞腐れアラサー男性、可愛いな。と思わず悶えてしまう。及川くんが不貞腐れると面倒な事しか無いのに、今ばかりは可愛い。
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