Secret love.
そんな私の手首を及川くんは掴む。


「どこ行くの。話終わってない。」

「これ以上、話したくない。しばらく実家に帰る。」


手首を掴んでいる手を払おうとしても、簡単には離してもらえない。

今一緒に居る事がお互いにとって良いとは思えないのに、及川くんは私から離れようとしなかった。何があっても離れようとしない及川くんをいつもは好きだと思えたけれど、今は煩わしい。


「もっとちゃんと話したい。」

「今は嫌。話したくない。」

「今離れたら、この事ちゃんと話さずに勝手に結論付けて終わらせるだろ。そんなん嫌だ。」

「今は考えがまとまってないから話したくない。」

「優花。」


いつもそうやって名前を呼ばれると立ち止まりたくなる。1人にしてほしい時に絶対に1人にしてくれない。

及川くんの顔を見ると先程の険しい表情ではなく、縋る様な不安そうな表情で私を見ている。私の不安に対して向き合ってくれなかったのに、こういうところずるい。


「姫野さんの事は何とも思っていないし、俺が好きなのは優花だけ。何があっても向こうを選ぶとかありえない。」

「…そうやって言えば、流されて仲直りすると思ってる?」

「違う。俺の本音だから。…不安だった、いつか俺じゃなくて後輩の真澄が良いって離れてくんじゃないかって。」

「…何で?」


太一はどう考えても私を好きじゃない。これは太一と私の中でだけでもなく、周りから見てもそうだと思っていた。

太一と仲は良いけれど、それでも先輩後輩の距離感は守っているし、太一なんて私が好きなの?と聞いただけであの嫌悪感たっぷりの顔だ。

及川くんが私と太一の関係を不安がることなんてなにもない。
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