Secret love.
「…分かった。優花、朝倉さんの所行ってくるね。」

「行ってらっしゃい。」


及川くんと一緒に実季を見送ると、横目で及川くんを見る。及川くんは平然と手を振っていて、それから白々しくこちらに向く。

絶対計算だったと思う。朝倉さんと実季を一緒にさせたのは。


「…なに実季と課長の為ですよーみたいな顔してるの。」

「優しい同期だと思わない?俺の恋はまだ実ってないのに、新田さんの為に協力してあげてるの。」

「白々しいな。」


及川くんの言葉にそう言うと、及川くんはこちらを見てふと笑う。まるで私の気持ちを見透かしている様で、少しだけ恥ずかしくなる。

きっと及川くんのずるさで一番うれしくなっているのは私だ。


「嫌じゃないって顔して、どうしたの?」

「…別に、嫌でも良くもない。」

「じゃあそんな顔しなくたっていいじゃん。川﨑さんだってそんなツンツンしても俺とまわりたかったってバレてるから認めなって。」


耳元でそう囁いてくる及川の肩に軽くパンチをお見舞いしてやると「いてっ」と言って肩を抑えている。

それから私が抹茶のたい焼きを口にすると、及川くんの視線が私の口元にあるたい焼きに移る。


「てか、何食べてんのそれ。」

「たいやき。」

「抹茶?」

「そう。」

「一口。」

「は?だめだよ。」


周りの目があるので間接キスすらも遠慮しなければならない。何平然と一口なんておねだりしているのか。
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